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新規血栓溶解薬テネクテプラーゼの
脳梗塞再開通療法への臨床応用を目指した研究

Tenecteplase versus alteplase
For LArge Vessel Occlusion Recanalization ; T-FLAVOR

ご挨拶
T-FLAVOR研究について

研究代表者 御挨拶

  • 国立循環器病研究センター 副院長 豊田一則
  • 2021年10月
    国立循環器病研究センター
    副院長 豊田一則

脳梗塞が「治らない」病気から「治る」病気へ変貌するきっかけとなった治療は、血栓溶解薬tPAを用いた静注血栓溶解療法です。tPAの普及に合わせて、脳卒中ケアユニット(SCU)の整備や救急搬送体制の改良など、わが国の脳卒中診療環境は大きく変わりました。ところが血栓溶解薬tPAであるアルテプラーゼは、開発の時代を含めて30年以上にわたって用いられてきましたので、より有効でより安全な血栓溶解薬への代替わりが望まれます。
 欧米ではテネクテプラーゼと呼ばれる新たな血栓溶解薬が、治療ガイドラインでも推奨され、患者さんへの使用例も増えてきました。このテネクテプラーゼは、国内で未発売です。杏林大学の平野照之教授を中心とする日本脳卒中学会のチームが、国内への早期導入を行政や製薬企業に働きかけてきましたが、現時点では目立った進展は見られません。局面打開のために、医師主導の臨床試験を立ち上げる必要性が、求められました。
 T-FLAVOR試験は、日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け、また厚生労働省が認めた先進医療として、国内14施設が参加して行われます。脳梗塞急性期に、血栓溶解療法とそれに続くカテーテル治療での血栓回収療法が必要と考えられる患者さんを対象に、テネクテプラーゼとアルテプラーゼの治療効果を比較します。血栓溶解薬が安全かつ確実に代替わりし、より良い治療効果を挙げて脳梗塞患者さんの後遺症をさらに軽減することが出来るように、全国の参加メンバーで頑張ります。

共同研究代表者 御挨拶

  • 杏林大学医学部脳卒中医学 教授 平野照之
  • 2021年10月
    杏林大学医学部脳卒中医学
    教授 平野照之

それは2012年9月のことでした。友人のChris Levi(当時 New Castle大学, 豪州)から「テネクテプラーゼの開発試験(TASTE)へ日本も参加してくれないか」と打診されたのです。同年のNEJMに発表されたAustralian TNK trialの結果はテネクテプラーゼが将来の脳梗塞再灌流療法の主役になるポテンシャルを示していました。当時、アルテプラーゼの治療時間枠を4.5時間まで延長できたこともあり、やっと諸外国と足並みを揃えて新規薬剤開発ができる、と期待に胸を膨らませたことを覚えています。
 しかし、事は簡単には進みません。複雑な薬剤ライセンスの問題で、日本にテネクテプラーゼという薬剤自体が存在していなかったのです。早期導入をはかるため国内外の関係各署に働きかけ、日本脳卒中学会でもプロジェクトチームを結成し、あらゆる手を尽くしました。打開策を模索するうちに、海外ではEXTEND-IA TNKなどのエビデンスが加わり、治療ガイドラインで推奨を得るまでになりました。
 足掛け10年でたどり着いたのが、今回のT-FLAVOR試験です。国立循環器病研究センターを中央調整施設とし、国内15施設共同でテネクテプラーゼの脳梗塞再灌流療法への臨床応用を目指します。わが国は四半世紀前にアルテプラーゼが海外で次々に脳梗塞治療薬として承認された際にも、国内承認が大きく遅れて当時の脳卒中治療に深刻な影響を受けた、苦い経験があります。同じ轍を踏まぬよう、一丸となって研究開発を進めてまいります。

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